たぬき、一人暮らしを始める

たぬきが実家からポンっと飛び出した。

実家では皆、おしくらまんじゅうの様に過ごしていたが、家族みな成人しており、物理的に家が狭くなってきた。
コタツの中に足を入れようものなら、隙間を探して蹴り合いが始まる。最後力尽きた時は誰かの足の上に置く始末。
同じ部屋の妹が歌を歌えば、私は何か作業をしていても、それに合わせて踊ってしまう。
楽しくなってそのまま踊り続け、一向に作業が進まない。

これはもうひとり暮らしをするしか無いと思ったのだ。

不動産屋さんに行き、たぬきが住める部屋を紹介してもらい、年末までに部屋を決めることに成功した。


そして年明け、家電やら家具やら必要なものを調達しに行く。

たぬきはひとり暮らし初心者なので、ひとり暮らしベテランの友人ひよこちゃんに連絡をした。

「ひよこちゃん。一人暮らしを始めるんやけど、色々と買い物に付き合って欲しい。セールとかあるみたいやからお正月やけどええ?」

「ええで〜」

快諾ありがとう。お正月やのに。

1月2日。

ひよこちゃんと待ち合わせをして、2人でに家電屋に向かう。
たぬきは何も分からず安い家電を見て回っているが、ひよこちゃんは商品説明欄をひとつひとつ読みながらじっくりと回っている。
洗濯機、冷蔵庫、炊飯器、電子レンジと一通りの家電を見てから、たぬきに声をかける。

「よし。たぬきちゃん大体目星ついたかな?」

ひよこちゃんに声を掛けられ、うんうんと頷くたぬき。絶対これといったこだわりは無かったが、大体の値段を見れたので購入金額の合計を計算していた。

「よし。行くで」

何やら気合いの入ったひよこちゃんは、お店に入って名刺を渡してくれていた店員さんをわざわざ探して声をかける。
近くに別の店員さんもいるのに何故〜?と思っていたら、お目当ての店員さんに商品購入の要望を伝え始めた。

「冷蔵庫、洗濯機、電子レンジ、炊飯器を購入予定なのですがーーー」

実際にひよこちゃんが目星を付けていた家電を店員さんに説明していく。

「冷蔵庫は白で、このくらいの高さのやつが良いんです」

「洗濯機はこのメーカーのもので、この容量のものでーーー」

「電子レンジはこの機能があるだけで大丈夫です。この予算内でどれがおすすめですか?」

「炊飯器、IHはどういった炊き方になるんですか?」

値段しか見ていなかったたぬきと違い、ひよこちゃんは性能等をきちんと確認していく。
いやほんと、カッコよかった!!! たぬきは後ろからヒョコヒョコとついて行くだけだった!!!
店員さんから話を聞き、家電が一通り決まった。
ひよこちゃんが店員さんに家電を聞きながら、後ろでお金の計算しかしていなかったたぬきは、大体値段こんなもんだなーと思い会計かと思いきや・・・

「これ全部購入すると、値引きってありますか?」

ひよこちゃんが店員さんに言った。

まさかの値引き交渉!ほんまかっちょええ!!!

店員さんが確認してきますと、バックヤードに戻って行った。

「ひよこちゃんめっちゃ強いな!」

「こんなにまとめて買うんやもん。値引きしてもらわな」

ひよこちゃんって普段ほわんとして良く笑っているイメージやってんけど・・・いやぁ〜頼もしかった!
後に聞いたのだが、ひよこちゃんは値引き交渉しやすそうな店員さんにも目星をつけていたそう・・・店に入った瞬間から戦いは始まっていたんですね。
そして戻ってきた店員さんからまとめた値段を提示されて・・・めちゃくちゃ安くしてもらっていた!!!ありがたい!!!本当に感謝!!!

そして無事に会計を済ませて店を出る。

そしてその後、ひよこちゃんと焼き鳥屋さんで晩御飯。
予算が浮いたのもあったので、もちろん奢らせていただきました。

家電の購入だけで、ひよこちゃんにはだいぶお世話になったのだが、この後もひよこちゃんに大変お世話になります。

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